Dar Sebastian
建物は、生きている。
使われず、手入れもされないままのものは
打ちすてられ、忘れ去られたのと同じ。
往時の煌めきを思うと、とても悲しい。
電車とバスを乗り継いで着いたのはアンドレジイドやパウルクレーなど、多くの芸術家に愛されたリゾート地、ハマメット。かのフランクロイドライトが「世界で尤も美しい家」と称したというダル・セバスチャン。
現在は国際文化センターという名前になっているけれど、かつてルーマニア人の大金持ちだったジョルジュセバスチャン邸。入口をくぐると広大な公園になっていて、左側に進むと邸宅。写真で見たことのあるプールが現れる。その奥には海へと続く松林。
そこを臨むように円形の劇場があった。ぽつぽつと彫刻が置かれているところをみると、こちらは国際文化センターとして演劇など行われているようだ。眺めは良さそうだけれど、海風にさらされて、機材など耐久性とのことなど、きっと考えられていないんだろうなあ…
とても広大な敷地だけれど、さほど特筆すべきところはないかな…と、正直がっかりしながら海辺を歩いて戻ってくると、管理人の男が現れ、英語かフランス語か、と問うた後に、さきほどは閉まっていた扉を次々に開けて解説してくれる。階段をあがったルーフトップの部屋は、絨毯が敷かれ、日の光と海風が心地よく入り込む、とても素敵な部屋だった。スペインのポルトリガットにある、ダリ邸を思い起こさせる。
入場料は払い済みなのだけれど、説明が終わった男は指と指をこすり合わせ、おれの携帯はこんなにボロボロなんだ…と分解されたような電話を見せて笑う。
今のこの邸宅を見たら、ライトはなんと言うだろう?